あし

あし
I
あし【悪し】
〔「あし」は絶対的な評価として, 「わろし」は相対的な評価として用いる〕
(1)(道徳的・倫理的に)非難されるべきである。 悪い。 けしからぬ。

「よきにつけ~・しきにつけ」「~・しからず」「人よりは妹そも~・しき恋もなくあらましものを思はしめつつ/万葉 3737」

(2)(吉凶・禍福について)不吉だ。 不運だ。

「例の所には, 方~・しとて, とどまりぬ/蜻蛉(中)」

(3)(美的に)みにくい。 醜悪だ。

「御声も惜しませ給はず, いとさま~・しきまで泣かせ給ふ/栄花(花山)」

(4)(技術的に)へただ。 拙劣だ。

「中納言, ~・しく探ればなき也と腹立ちて/竹取」

(5)(身分的・階層的に)卑しい。 下賤(ゲセン)だ。

「冬はついたち, つごもりとて, ~・しきもよきもさわぐめるものなれば/蜻蛉(上)」

(6)(品質的に)粗末だ。 粗悪だ。

「下衆女のなり~・しきが子負ひたる/枕草子 122」

(7)(気分・心理状態について)不快だ。 不機嫌だ。 苦しい。

「おほやけの御気色~・しかりけり/伊勢 114」

(8)(自然的状況について)荒れている。 険悪だ。

「外の海いといみじく~・しく浪高くて/更級」

(9)都合が悪い。 具合が悪い。

「折~・しく」「ここには弓場なくて~・しかりぬべしとてかしこにののしる/蜻蛉(中)」

(10)(動詞の連用形の下に付いて)…するのが難しい。 …しにくい。

「他国(ヒトクニ)はすみ~・しとそいふ/万葉 3748」

II
あし【葦・蘆・葭】
イネ科の多年草。 温帯および暖帯に広く分布し, 水辺に自生する。 地下の長い根茎から高さ2メートル以上に達する稈(カン)(茎)を出し, 群生する。 葉は二列に互生し, ササの葉に似る。 秋, ススキに似た大きな穂を出す。 稈は簾(スダレ)やよしずにする。 「あし」が「悪し」に通ずるのを忌んで, 「よし」ともいう。 ハマオギ。 ﹝季﹞秋。
~をふくむ雁(カリ)
海を越える時, 海上で休むのに用いるため, 葦の葉を口にくわえていくという雁。
III
あし【足・脚】
(1)動物の胴に付属していて, 歩行や体を支えるのに用いる部分。 特に足首から先の部分をさすこともある。

「~を組んで椅子に座る」「~に合わない靴」

〔哺乳動物には「肢」, 昆虫には「脚」を多く用い, ヒトの場合は足首からつま先までを「足」, 足首から骨盤までを「脚」と書き分けることもある〕
(2)形態が{(1)}のようなもの。 (ア)物の下方にあってそれを支えている部分。 「机の~」(イ)本体から分かれて出ている部分。 「かんざしの~」「旗の~を見て/盛衰記 35」(ウ)漢字の構成部分の名称。 「想」「然」などの漢字の下部にある「心」「灬」など。 脚(キヤク)。
〔多く「脚」と書く〕
(エ)船や櫓(ロ)の水中に入る部分。 (オ)〔数〕 垂線が直線または平面と交わる点。

「垂線の~」

(3)(ア)歩くこと。 行ったり来たりすること。

「~を止める」「~を伸ばす」(イ)歩行の速さ・能力。 「君の~なら五分で行ける」「~が強い」(ウ)交通の手段。 「~の便が悪い」(エ)物事の動きや推移を, 動物の足の動きや歩みに見立てていう。 「雨~」「日~」

(4)銭。 おあし。 《足》
〔中国, 晋の魚褒の「銭神論」に「翼なくして飛び, 足なくして走る」とあることからという〕
(5)(餅などの)ねばり。 腰。
(6)「足金物」に同じ。 一の足・二の足がある。
~が奪われる
交通機関が麻痺(マヒ)状態になり, 通勤・通学などができないようになる。
~が重・い
(1)足がだるい。
(2)出かけたりする気がすすまない。
~が地に付かない
(1)うれしくて, 興奮して落ち着かないさまをいう。
(2)考えや行動がしっかりしていない。
~が付・く
(1)犯人の身元や逃げた足どりがわかる。 また, 犯行が露見する。
(2)情夫ができる。 ひもが付く。

「げい子にや又しても~・く/滑稽本・膝栗毛 8」

~が出る
(1)予算を超えた支出になる。

「出張すると, いつも~出る」

(2)隠しごとが現れる。 足が付く。
~が遠の・く
訪ねることが間遠になる。
~が早・い
(1)歩いたり走ったりするのが速い。
(2)食物が腐りやすい。

「ゆで卵は~・い」

(3)売れ行きが早い。
~が棒にな・る
長い間歩いたり, 立ち続けたりして, 足の筋肉がこわばる。 非常に足が疲れる。
~が乱・れる
(1)足並みが乱れる。

「反対運動の~・れる」

(2)事故などで交通機関が乱れる。
~が向・く
知らず知らずその方へ行く。
~に任(マカ)・せる
(1)これというあてもなく, 気の向いた方へ歩いて行く。
(2)足の力の続くかぎり歩く。
~を洗・う
悪事やよくない仕事をやめて正業につく。 堅気になる。 また, 単に現在の職業をやめる意でも使う。
~を重ねて立ち、目を側(ソバダ)てて視(ミ)る
〔史記(汲黯伝)〕
左右の足をぴったりとつけ, うつむいて横目で見る。 非常に恐れているさま, おずおずするさまにいう。
~をすく・う
相手のすきをついて, 卑劣なやり方で失敗させる。

「部下に~・われた」

~を空(ソラ)
足が地につかないほどあわてふためくさま。

「ことごとしくののしりて~にまどふが/徒然 19」

~を出・す
(1)予算を超えて支出する。
(2)相場などで損をして, 委託保証金・証拠金などを支払いにあてても払いきれなくなる。 また, 損をする。
~を使・う
活発に動き回る。

「~・って書いた記事」

~を取られる
(1)足もとをすくわれる。
(2)酒に酔って歩けなくなる。
~を抜・く
関係を絶つ。 仲間からはずれる。
~を伸ば・す
(1)楽な姿勢をとってくつろぐ。
(2)ある地点に着いたあと, さらにそこから遠くへ行く。
~を運・ぶ
出向いて行く。

「陳情のため何度も~・ぶ」

~を引っ張・る
仲間の成功・勝利・前進などのじゃまをする。 また, 結果としてじゃまになる行動をする。
~を踏み入・れる
入り込む。 特に, それまで関係のなかった方面に, 関係するようになる。 足を入れる。
~を棒にする
足が疲れて感覚がなくなるほど歩き回る。 奔走する。 足を擂(ス)り粉木にする。

「~して探す」

~を向・ける
(1)ある方向へ向かう。
(2)(「足を向けて寝られない」の形で)人に対する恐れ多い気持ちや感謝の気持ちを表す。

Japanese explanatory dictionaries. 2013.

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